今夜、俺のトナリで眠りなよ
「完全に独立しようと思って、実家に自分の荷物を取りに行ったら、兄貴の母親にめちゃ叩かれた」

「大丈夫?」

「平気。ちょっと痛かったけど」

 真っ赤になった頬に触れて、一樹君が痛そうに顔を歪めた。

「家に帰ったら、冷やそうね」

「そのことなんだけど」

 一樹君が立ち上がって、ポケットに手を突っ込む。

「俺、一人暮らししようかと思って」

「どうして?」

「本当は、桜子さんと一緒に住む気でいたんだけどさ。桜子さんのお父さんから、いくつか条件を出されちゃって」

 一樹君が、肩をすくめた。

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