今夜、俺のトナリで眠りなよ
 私を奪おうとしているってどういうこと?

「マジであんたをどうにかしようなんて思ってねえから、警戒すんなよ。ただ兄貴たちにはそう思われている方が楽ってこと」

「どうして?」

「女のケツを追っかけているタダの馬鹿に見えるだろ? 若気の至りってヤツ」

「馬鹿って思われてて、悔しいとか思わないの?」

「思わねえよ。あいつらに馬鹿って思われてれば、その分、俺は自由に生きれる」

「息苦しくない?」

「普通に生きているほうが息苦しい場合もあんだよ。年がら年じゅう、監視されてみろ。生きた心地がしねえよ」

 私は一樹君の隣に腰を下ろすと、ふうっと息を吐いた。

「それでも自分を偽ってるんだよ?」

「偽っているほうが楽な人生もあるんだよ。捻くれたヤツだと思われるだろうが、俺にはこういう生き方しか知らないんだ。放っておいてくれ」

 一樹君がくすっと笑うと、ソファを離れた。

 居間のドアの前に立つと、私に振り返る。

「俺が居て良いこともあるだろ?」

「え?」

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