今夜、俺のトナリで眠りなよ
「兄貴が浮気相手のところに行っている暇がねえ。仕事が終わるなり、あんたの待つ家に直帰してるだろ」

 一樹君が苦笑すると、部屋を出て行った。

 そんなのちっとも嬉しくない。

私に会いたくて帰ってきているわけじゃないもの。

 それより一樹君は、それでいいのだろうか?

 絶対、人生を損している気がする。勿体ないよ。





















 夜八時。優樹さんが帰宅する。

 玄関のドアが開く音がして、私は廊下に出た。

「おかえりなさい」

「ただいま。一樹は? 靴が見当たらないけど」

「今夜はお友達と飲み会だって、夕方出かけて行ったよ」

「そうか。珍しく外出したんだね」

 優樹さんが小さく微笑んだ。
< 27 / 135 >

この作品をシェア

pagetop