今夜、俺のトナリで眠りなよ
 お皿なんて一枚も割ってないのに。どうしてそんなことを言うの?

「アレ、高かったのよ。フランスに行って、わざわざ職人に掛けあって……」

「割っちまったんだから、仕方ねえじゃん。元に戻らねえし」

「一樹、貴方って人は。いつもいつも、他人に迷惑ばかりかけて。桜子さんが怪我でもしたらどうするの」

「怪我はしなかった、たぶんな」

 ぺラッと雑誌のページを、一樹君が捲った。

 ふんっとお義母さんが鼻を鳴らすと、身体の向きを変えた。

 一樹君、もしかしてお義母さんの怒りを私から逸らしてくれたの?

 その後も、お義母さんが何か言うたびに、一樹君がフォローしてくれた。

 結局、食事会の間中、優樹さんが帰ってくることは無かった。












 夜九時を回ると、お義母さんが「そろそろ帰るわ」と腰をあげた。

 その言葉を聞いて、私の両親も帰り支度を始めた。

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