今夜、俺のトナリで眠りなよ
「金を持ってる男なんて、そんなもんだろ? そこらじゅうに愛人がいて、隠し子がいて。んで、後々で隠し子と本妻の子供で跡取り問題勃発ってな」

 くくくっ、と一樹君が失笑する。

「まるでよくあるサスペンスドラマね」

「現実で起きているからサスペンスドラマにもなるんだよ」

 私は身体の向きを変えると、布団の中に足を入れた。

「隠し子……優樹さんにはいると思う?」

「さあね。俺が知るかよ。そんなん気にするなら、さっさと兄貴の子を身ごもれよ。そうすりゃ、本妻として顔がデカくなる」

「寝室は別々。優樹さんがいつ家に帰ってきてるかわからないのに……」

「妻としての役目を果たせないって?」

「やめて。まるで妻は、跡取りさえ産めばいいみたいな言い方しないで」

「事実だろ。あんたは兄貴の子を産むために結婚したんだ。それ以上のことを、兄貴も、俺の親も望んじゃいねえ」

「そんな……」

 私は布団の中で膝を掛ると、背中を丸めた。

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