今夜、俺のトナリで眠りなよ
目の端に映っている一樹君の身体が動くのがわかる。
ちらっと私を見て、一樹君はまた背を向けた。
「あんたには酷な現実を突きつけているようで、良い気はしねえけど。気休めとか、お世辞とかって俺、嫌いだから」
『別に、意地悪で言ってんじゃねえから』とぼそっと一樹君が小さな声で呟いた。
「なんで……私と結婚したんだろう」
「それって俺に質問してんの?」
「理由知ってるなら教えて」
「馬鹿で騙しやすそうだからだろ。何も知らずに夫に尽くしそうだし。夫に愛されてるって信じて、子どもも産んでくれそうだから。実際、30分前までは兄貴に愛されてるって思ってたんだろ?」
「まあ、ね」
私を想ってくれているから、結婚してくれたんだと思ったのに。
私は夫に愛されてなんていなかったんだ。
夫の近くには愛人がいて。パーティの合間に、弟の部屋を借りて、逢引をしている。
私は今まで愛人の存在も知らずに、パーティの度に夫のために、慣れないドレスを着て、取引先の人々に挨拶回りしていたなんて。
ちらっと私を見て、一樹君はまた背を向けた。
「あんたには酷な現実を突きつけているようで、良い気はしねえけど。気休めとか、お世辞とかって俺、嫌いだから」
『別に、意地悪で言ってんじゃねえから』とぼそっと一樹君が小さな声で呟いた。
「なんで……私と結婚したんだろう」
「それって俺に質問してんの?」
「理由知ってるなら教えて」
「馬鹿で騙しやすそうだからだろ。何も知らずに夫に尽くしそうだし。夫に愛されてるって信じて、子どもも産んでくれそうだから。実際、30分前までは兄貴に愛されてるって思ってたんだろ?」
「まあ、ね」
私を想ってくれているから、結婚してくれたんだと思ったのに。
私は夫に愛されてなんていなかったんだ。
夫の近くには愛人がいて。パーティの合間に、弟の部屋を借りて、逢引をしている。
私は今まで愛人の存在も知らずに、パーティの度に夫のために、慣れないドレスを着て、取引先の人々に挨拶回りしていたなんて。