【短編】こんなものいらない
 
 
「その辺はあたしらも聞いてないんだ。ていうか聞いても教えてくれなかったし」

 
由美は苦笑いで「慶太らしいよね」と言った。 
 
確かに、慶太は昔からそういうイベントでサプライズするのがすごく楽しそうだったし、頷ける。 
 


毎回あたしの驚いた顔を見て喜ぶ慶太。

その顔があたしには嬉しくて、サプライズの途中で気づいても驚いたフリをした事もある。 
 
 
 
 
「ま、なんだったら今夜あそこのファミレス行ってみな?いるだろうし」 
 
 
ほら、前まであたしら4人で良く行った場所、そう由美は付け足した。



「…ん、行ってみるね。ありがとう由美も仁も」 
 
「いえいえ」

「大事な日、何かわかったら教えろよ」

「ふふ、うん」

 
 
心が弾んだ。

先ほどまで墜ちていたとは思えないくらい、軽快に。
 
 
あたしは口元の緩みを押さえながら、2人と別れ、今日の目的を果たしに向かった。




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