【短編】こんなものいらない
ドアの上部についている鈴がチリンチリンとなって、あたしの入店を知らせる。
「いらっしゃいませー、お1人様ですか?」
「あ、はい」
「お煙草吸われますか?」
「や、禁煙席で」
「こちらへどうぞー」
席に通してくれたのは、あたしと同じくらいの年の女の子だった。
席に座って、メニューを広げる。
チラチラ周りを見てみても、慶太らしい人は見えない。
やっぱりあれは嘘だったんじゃないかという気持ちが生まれた。
けれどもしかしたらキッチンの方かもしれないし、と1人納得する。
いやでも、キッチンなら姿を確認できないし、来た意味が無いのかも。
そんな風に思いながら適当にメニューをめくる。
そして適当に注文を決めて、テーブルの上の呼び出しボタンで店員を呼んだ。