【短編】こんなものいらない

目覚ましに飲もうと、インスタントのコーヒーの粉をカップに入れた。

やかんにはもう水が入っていて、そのまま火を付ける。 

それからお湯が沸くのを待つために、ソファに腰掛けた。

 
 
「はあ…」

 
無意識にため息が零れた。


テレビはどこの局を回しても朝の番組。

おもしろいのはやってないのかと思い、いつものチャンネルを回した。

 
"――春一番がやってきました。気温は温かいですが、強い風には注意しましょう。それでは次のコーナーです…" 
 
 
春。

そうテレビのニュースキャスターが言った。



「春かあ…」



慶太とは入学して直ぐ、大学のサークルで知り合って、告白されて付き合うようになった。

両思いだったとかそんなんじゃなかったけれど、付き合っていくうちに慶太に惹かれていった。 

季節は春だった。
 
 
確か、その頃の慶太はすごく口下手で。



"す、好きなんだよ俺"

"慶太、自分が好きなの?"

"んなわけあるかい!俺はお、お前が好きなの!"

"…え?"



すごく可愛いと思って、思わずOKした。

慶太は付き合ってからもそんなんだった。

当時はみんな羨ましがる程ラブラブで、毎日一緒に行動していた気がする。

 
クリスマスやお互いの誕生日、記念日、必ず一緒にお祝いした。
 
< 2 / 31 >

この作品をシェア

pagetop