【短編】こんなものいらない
目覚ましに飲もうと、インスタントのコーヒーの粉をカップに入れた。
やかんにはもう水が入っていて、そのまま火を付ける。
それからお湯が沸くのを待つために、ソファに腰掛けた。
「はあ…」
無意識にため息が零れた。
テレビはどこの局を回しても朝の番組。
おもしろいのはやってないのかと思い、いつものチャンネルを回した。
"――春一番がやってきました。気温は温かいですが、強い風には注意しましょう。それでは次のコーナーです…"
春。
そうテレビのニュースキャスターが言った。
「春かあ…」
慶太とは入学して直ぐ、大学のサークルで知り合って、告白されて付き合うようになった。
両思いだったとかそんなんじゃなかったけれど、付き合っていくうちに慶太に惹かれていった。
季節は春だった。
確か、その頃の慶太はすごく口下手で。
"す、好きなんだよ俺"
"慶太、自分が好きなの?"
"んなわけあるかい!俺はお、お前が好きなの!"
"…え?"
すごく可愛いと思って、思わずOKした。
慶太は付き合ってからもそんなんだった。
当時はみんな羨ましがる程ラブラブで、毎日一緒に行動していた気がする。
クリスマスやお互いの誕生日、記念日、必ず一緒にお祝いした。