【短編】こんなものいらない
あたしがその続きを口に出そうとすると、それを仁が遮った。
「慶太が里奈を好きじゃないなんて、そんな訳あるか」
「え…?」
どうしてそう断定的に言うんだろう。
それともただの励まし?
眉間にしわを寄せて考える。
けれど仁は喋るのを止めようとはせず、そのまま言った。
「知ってるだろ、慶太のお前に対するベタ惚れよう」
「あー、たしかに里奈にぴったりだったよね」
確かに、前はそうだった。
いつでもどこでも、慶太はあたしを見つけると、周りを気にせず手を大きく振って叫ぶ。
けれどそれは、あくまで前までの話だ。
「それは前の話でしょ?今は」
「だから。今もだ、い・ま・も」
訳がわからない。
今も?
どうしてそういう風に断定できるの?