今までの自分にサヨナラを
私は彼が何を言いたいのかさっぱり分からない。
「別に普通じゃない」
今日の洋服だって女子高生なら普通だし、私は変わらず無愛想だ。
私は思わず釈然としない彼に眉をしかめる。
すると、彼は恥ずかしそうに顔を背けて、こう言ったのだ。
「いや……、さゆが可愛くて――」
沈黙が流れて、胸が微かに高鳴る。
彼は変わらず顔を上向き気味に背けたままで、私はその言葉に耳を疑うばかり。
なのに、頬は火照ったように熱を帯びて、風で揺れたポニーテールの後れ毛は妙に首を擽った。
そして私たちはお互い無言で歩を進めたのだった――。