今までの自分にサヨナラを


到着したのは、この街で一番大きな公園。


駐車場も設けられていて、様々な遊具で遊ぶ子供連れが目についた。


私たちは公園内のくねった道を歩くと大きな木のそばに設置されたベンチに彼が腰を下ろしたので、私はその横に車椅子をとめる。


「そういえばあの時、退院する日何で教えてくれなかったの?」


やっと目線が一緒になった彼が口にしたのは、そんな唐突な質問。


笑う子供の声が遠退いていく。


“臆病な私はあなたから逃げたかったの”


でも、そんな情けない言葉言えるわけもなくて、私はふわふわなスカートをきゅっと握って、押し黙る。



< 104 / 326 >

この作品をシェア

pagetop