今までの自分にサヨナラを
彼の見つめる瞳はそんな弱い部分まで見透かしそうで怖い……。
「はぁ……、何も言わずにいなくなるから、びっくりした。のんもすげえさみしがってたんだよ」
やっと私はそんな瞳から解放されたけど、彼は前を向いてため息まじりに言う。
「ごめん……」
脳裏に幼いのんちゃんの顔が浮かんで、私はぼそりと謝った。
確かに、のんちゃんには申し訳なかったかもしれない。
「あっ、だけど、何で思い出せたの?」
すると、ふとした彼の問い掛けに、私は短く息をつく。
その時、目の前をバタバタと靴音を響かせ、追い掛けっこをする小さな男の子と女の子が笑って駆けていった。