今までの自分にサヨナラを
「おう、光帰ってきたのか!その子が紗由里ちゃんかぁ?」
カウンター越しにひょっこりと頭を出す頭にタオルを巻いた体格のいいおじさん。
「うん、そうだよ、父さん」
彼はお父さんに笑顔で言葉を返す。
私は焦りながらも挨拶をした。
「こ、こんにちは……。水瀬紗由里といいます」
緊張してなんだかうまく頭が回らない。
きっと今日は作り笑顔だってかたいんだろう。
「バカ息子だけど、よろしくな」
だけど、そう言って豪快に笑う彼のお父さんは、明るくて壁を感じない。
「父さん!それは余計」
そして、笑いあう二人はやっぱり似ている。
私は苦笑いしかできなかったけれど、少し羨ましくも思えた。