今までの自分にサヨナラを


「あらぁ、紗由里ちゃんなの!?すっかり綺麗になっちゃって!」


すると、厨房の奥から割烹着姿のおばさんが私の前にとんできた。


「また会えて嬉しいわ。元気だった?」


しゃがみこんで私に問い掛けてくる彼のお母さんは、あの頃と変わらず若々しい。


綺麗な短い黒髪は緩やかにパーマがかかって、華やかな笑顔が似合う。


でも、おばさんも本当に私のこと覚えてくれてたんだ……。


「あ、はい、元気です。ありがとうございます――」


心の奥が少しあたたかくなる。


どうも彼に関わると調子が狂う気がしてならない。



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