今までの自分にサヨナラを
「よかったわ。じゃあ、ゆっくりしていってね」
おばさんは彼にそっくりな笑顔を浮かべると、厨房の奥に去っていった。
その時、とんとんと肩を叩かれて私はびくりと上を向く。
「じゃあ、奥行こ」
彼は優しく私の顔を覗き込んでいて、私はぎこちなく頷いた。
厨房横の暖簾をくぐる彼に続いて、私も賑やかな店をあとにする。
厨房の調理器具の音は少し遠退いて、目先には大きな段差があった。
そこにはサンダルや運動靴が並び奥にはダイニングセットがちょっぴりのぞいている。
ここが内玄関なのだろう。
そんなことを思っていたら、階段の方から騒々しい音が聞こえてきた。