今までの自分にサヨナラを


「あぁ、もう!さゆ、車椅子じゃなくても座れる?」


彼は何かが吹っ切れたように振り返ると、私にそんなことを聞いてくる。


もう帰ってもいいのかななどと思っていたから、余計に驚く。


私は突然のことに唖然としながらも、もごもごと口を開いた。


「えっと、あの、何かクッションとか置いて支えがあれば」


「じゃあ、ちょっとごめん」


彼はそう言うなり、私のショートブーツを脱がせて、車椅子のベルトを外してる。


「えっ……、ちょっと!」


気付けば体は高く宙に浮いていて、何が何だかわからない――。



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