今までの自分にサヨナラを
「お、お兄ちゃん!?」
大きく響いたのんちゃんの慌てふためく声に引き戻されて、状況が少し見えてくる。
彼の胸はぴったりくっついて、下から見上げる近い顔に、しっかりと私を抱える両腕が物語ってる。
私、お姫様抱っこされてるんだ――。
やっと認識できれば、冷静でなんかいられない。
恥ずかしすぎて、声だってろくに出せやしない。
「の、のんがうるさいからだろう!もう上……行くから」
「も~、さゆおねえちゃんに変なことしないでよぉ!」
彼はのんちゃんの声も無視して階段を上がっていく。
私は心の動揺に目眩でも起こしそうだった……。