今までの自分にサヨナラを


無言のままの彼に抱き抱えられて、やっとベッドの上にふわりと腰掛けさせられた。


心臓は無駄に音をたて、目なんかとても合わせられない……。


「ご、ごめん!……のんがあんなだから、つい俺の部屋に……。ごめん!」


横に座ると彼がただひたすらに頭を下げて謝ってくる。


でも、今気になるのはそれよりも、この状況じゃないだろうか……。


「別にいいけど……、少し離れて……」


彼はきょとんと私の方を向くと、数秒目を瞬かせた。


距離にして数センチ。


整った彼の顔がみるみると耳まで朱に染まっていく。



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