今までの自分にサヨナラを
緊張で何も見えてなかった彼の部屋を、ぐるりと見回してみる。
シンプルなグレーのラグに、枕元には何も置かれてないブルー系でまとめられたベッド。
机の上には乱雑に置かれた私と同じ簿記のテキスト、床には余計な飾りの付いていない鞄。
改めて見ると、少し殺風景で、本当に男の子の部屋だ。
だけど、何か違和感がある。
どこを見回してもない、彼が語っていた夢が――。
絵にかかわるものが何一つ見えるところにないのだ。
あんなに夢を語っていたのに。
どうでもいいのだけれど、不思議でならない。
その時、ある驚いた声が聞こえてきた。
「養護学校の子とか!?」
それは私の頭の中で大きくこだました……。