今までの自分にサヨナラを
微かに聞こえた男の人の声に、私はふっと我に返る。
何故か胸が騒つく。
でも、まわりを見渡しても黒い制服の集団とそれに入り交じるうちの生徒達、そして窓にはさえない空があるだけ。
気のせいか……。
「あ!やっぱりさゆだ――!さゆだよね?」
私は間近で聞こえた声に目を見開いた。
「……なっ、何ですか?」
だって、突然目の前に見知らぬ少年の顔があるのだから当たり前だろう。
短い黒髪の少年が子供みたいに屈託のない笑顔で私に笑いかけた。
何なの、この人は……?