今までの自分にサヨナラを


“羽田野光”


表示された送り主の名前は、ご丁寧にもフルネーム。


この間、メールアドレスも知っておきたいと、彼お得意の爽やかさを纏った強引さに押し切られ、赤外線で交換させられたのだ。


〈じゃあ、これから迎えに行くね。桜見に行くの楽しみだなぁ〉


手はダラリと力が抜け、ケータイはテーブルの上にゆっくりと滑り落ちる。


今日だった……、一方的に約束された花見の日。


気が進まない……。


でも、約束をしてしまったからには、行かなくてはならないだろう。


でも、これで本当に最後にすればいい。


もう彼には会わないほうがいいから――。



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