今までの自分にサヨナラを
私はシャープペンを一回ノックして芯をしまうと、問題集の表紙をぱたりと閉じる。
着々と片付けをする私に、何か視線が突き刺さっているのを感じた。
見上げるとそこにいたのは、キッチンで洗い物を終えタオルを握るお母さん。
私を見つめる瞳はいつになく冴えなくて、そして不安気に揺れている。
「……また光君に会うの?」
お母さんの決して明るいとは言えない声が、しんとしたリビングを漂った。
お母さんが聞きたいのはそんなことじゃないよね。
その言葉とその瞳の奥の想いなんて知ってる。
「うん、ちょっとね」
だけど、今その言葉を聞いたら耐えられそうにもなくて、私はとぼけて答えたんだ。