今までの自分にサヨナラを
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右も左も田畑が広がる。
瓦屋根の民家はぽつりぽつりと建ち、広がる田園風景は何もないただの田舎。
見える色は、能天気な空の青と、誇りっぽい土の茶色、芽を出す緑。
面白みの欠けらもない景色。
「ねえ、昨日下見に行ったんだけど、もうすごくいい感じに咲いてたよ」
私は彼から距離をとって車椅子を走らせていたのに、彼は急に振り返るのだ。
頭の後ろで腕を組んで、自由な足は軽やかに後ろ歩き。
そして、極め付けは目が線になるほどとびきりの笑顔。
目を背けたくなるくらい眩しい。