今までの自分にサヨナラを


いくつだって嘘は吐いてきた。


障害に理解のない人にふりまいた笑顔。


「さゆはわかってるもんね。我慢してね」親の信頼の言葉に笑顔の大丈夫。


嘘なんて平気で吐けた。


その場をしのぐために、迷惑を掛けないために。


否、違う。


自分を守りたかっただけだ。


なのに、今は何で胸が潰れそうなの……?


俯いて車椅子を走らせていると、私の速度に合わせた彼の控えめな歩幅が見える。


嘘なんてない優しすぎる人――。


私がこの人の隣に今、並んでいることは、ひどく可笑しいことなんだろうね……。



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