今までの自分にサヨナラを
そんな中、俯いた私の視界から彼の足が消えた。
代わりに残ったのは、軽い足音。
遠ざかっていく――。
小さくおきた風が過ぎ、リズムが刻まれるたび、彼が遠くなる。
本当の距離に戻るように、遠ざかる……。
なのに、呼ばれる私の名前――。
「さゆ――」
距離など感じないほどに、一直線に届く澄み切った声。
顔を上げれば、離れてもわかるほど輝く笑顔。
手招きする彼の頭上には、薄紅の花が見事に咲き誇る。
公園の外周を囲む桜の木々たちが枝いっぱいに花をつける。
木々は薄紅に染め上げられ、アスファルトには散りばめられた花弁。