今までの自分にサヨナラを
きっと一度強い風が吹けば儚く散ってしまう。
そのぐらい一心に命を燃やす狂い咲きの桜と、太陽の笑顔をもつ彼が、まるで一枚の絵のようにさえ見えるのだ。
時間を止めたように、切り取ったように。
そこだけがこの世界と掛け離れて見える――。
気付けば誘われるように吸い寄せられていた、幻想に。
真上を向くと視界いっぱいに映りこむのは、優しくだけども力強く咲く淡い淡い薄紅。
そこに高すぎる青はなくて、穏やかに降りる木漏れ日と手の届きそうな幻だけがある。
「きれい――」
無意識に呟いた。
「そうだね」
そう、ここはまるで絵の中の世界――。