今までの自分にサヨナラを
こういう人はすごく面倒臭い。
私が苦手なのは、綺麗事を言う人、無駄に明るい人。
属に言う“いい人”ってやつ。
間違いなくこの人はそれだと直感的にそう思う。
きっと悪い人じゃない。
だけど、私の記憶にないことを、この人は鬱陶しいほどに言い張る。
……もう付き合ってなどいたくない。
「すみません。間違いじゃないですか?失礼します」
私は早く去りたくて、右手で電動車椅子の電源を入れる。
「待って――」
その瞬間、すっと私の右手にぬくもりが触れた。