今までの自分にサヨナラを


のんちゃんは小さくため息をもらして、そっと離れると殺風景な壁をぐるりと見渡した。


瞳は前髪に隠れて見えないけれど、かたく結んだ唇が躊躇いがちに開かれる。


「お兄ちゃんが中三だった時ね……、お父さんがちょっと体壊して倒れたの。大したことはなかったけど」


私は俯きながら話すのんちゃんに全力で耳を傾けた。


聞くのは怖いけれど、決心した拳をかたく握る。


私に何かできるなんて思わないけど、優しすぎる彼を知っておかなくてはならないのだ。


「それからだよ、あんなに好きな絵をぱったりやめたのは……」



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