今までの自分にサヨナラを
のんちゃんの声が震えて、私の心を大きく揺らした。
「絵の道具はいつの間にか目に見えるとこから消えて、店を継ぐって言いだすようになったの」
のんちゃんは、首をがくりとおると、髪がさらりと前にたれて顔を隠した。
のんちゃんは彼の絵が一番好きだった一人だろう、辛くないわけがない。
でも、これで辻褄があった――。
「お兄ちゃんはよく言えば責任感が強くて、悪く言えば頑固だから……」
のんちゃんの言う通りだ。
優しい分だけ、なんとも厄介な性格。
だけど、私は納得できないことが一つある。
人には夢を追えといって、自分は諦めるというの?
私はその酷い矛盾に奥歯をぎゅっと噛み締めた。