今までの自分にサヨナラを
私は小さく大丈夫と返事しながらも、頭からは彼の影が消えることはなかった。
でも、彼は何事もなくそっと隣に腰を下ろして、ベッドが少し沈むのをなんとなく感じた。
「さゆ、あのさ――」
彼は静かに話を切り出すと、曇りのない綺麗な黒い瞳で私をとらえる。
まるで、何かを決心したように揺らがない。
「今度、さゆのお父さんとお母さんに挨拶に行くよ」
彼の言葉の余韻が耳に残る。
私は息を呑み、眉をひそめた。
二人の座るベッドより、私の心の方が重く重く沈んでいく。
現実という名の重苦しい石に、押し潰されていくようだった。