今までの自分にサヨナラを
重苦しい空気が肩にのしかかる。
私たちの前にかまえるお父さんの目は険しくて、お母さんが湯呑みを順に置く音しかしない。
でも、そんな空気をいよいよ切り裂いたのは、他でもないお父さんだった。
「で、今日はどういうことなんだい――?」
無音の中に低い声が響く。
胸はずしりと重くなって、唇を動かそうとするけど、声がうまく出てこない。
だけど、テーブルの下にあった冷えた手に、あたたかいものが触れた。
私の手をすっぽり覆う、少し震えた大きな彼の手。
横を向けば、まるで大丈夫だとでも言うように微笑む彼の瞳があった。