今までの自分にサヨナラを


「もしもし、さゆ、大丈夫――?」


一瞬にして視界が滲んだ。


ケータイから流れてくる音をこんなに優しく感じたことなんてない。


その声は優しく染み入るようで、心に彼が広がっていく。


彼は何でいつも、私が欲しい時に欲しい言葉をくれるのだろう……。


胸が余計に熱くなる。


私は彼の言葉がこんなに欲しかったんだ。


その言葉だけで心が優しさで満たされるなんて知らなかった。


「うん、今日はごめん……」


それに比べ私の声は不甲斐なく、とけるように消えゆく。


彼の声を聞いた途端、どんどん弱くなる。


これが本当の私なんだ。



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