今までの自分にサヨナラを
それだけで頬に熱が差して、鼓動が自分ではないみたいに騒がしくなる。
間近にある無邪気な光りを放つ瞳に、どれだけ私の心臓が音をたててるのか彼には聞こえてないだろうか。
だけど、そんなことをごちゃごちゃ思っていても、彼はきっと気付いていない。
彼は車椅子の右側にあるクラッチを電動から手動に何気なく入れ替えているだけで、勝手に舞い上がる心臓が少し恥ずかしくなって俯いた。
「じゃあ、行こっか」
だけどいつも、優しい声が頭上から、陽だまりのように降り注ぐ。
その声を聞くと、気にしてることなんてどうでもよくなってくるのが不思議だ。