今までの自分にサヨナラを
虚ろに、部屋の隅にある艶やかな木目のドレッサーが目に入った。
ただぼんやりと見つめる先には、お母さんがあるものを出し入れしていた左上の引き出し。
私はその一点に、吸い込まれそうなくらい目を離さずにいた。
右手はおもむろにハンドルを傾け、少しずつ近づくドレッサーとの距離。
そして私は、そっと左上の引き出しのひんやりとした取っ手に手を掛ける。
少しずつ少しずつ力をこめて引くと、私は手をのばし入れて探った。
時間は少しもかからなかった。
私の求めているものは、難なく指に触れる。
まるで、ずっと待っていたかのように……、吸い寄せられるように……。