今までの自分にサヨナラを
必要最低限しか開けていない引き出しは私の目線では何も覗き込むことはできない。
でも、薄く、冷たく、細長い物体はよく見ていたあれに間違いなかった。
そっと取り出した私の手が握る金属の柄の先には、透明なカバーの中で煌めく刃。
こんなちっぽけなものでも、私が手に取れる唯一の刃だ。
眉用のカミソリでも、私のような小さな命くらいきっと葬り去れる。
こんな無意味な命にも、誰かを煩わせる身体にも、すがりついてまで生きる意味がない。
今はこの通り、この命を葬ってくれる道具がこの手にあるのだ――。