今までの自分にサヨナラを
記憶の海をあてもなく手探りで探す。
でも、何も掴めるものはない。
だけど、私は無意識にその文字をなぞっていた。
焦って書いていたのに、綺麗で、どこかやさしい文字――。
なんか、この文字は懐かしい。
根拠も、記憶もないけど、心が自然に反応する。
あったかくなる――。
……だけど、わかんないよ。
私を知ってるあの人も、綺麗すぎるあの人の笑顔も。
私には、あの人の存在が遠すぎる……。
「――ねぇ……ねぇ、さゆりん?」
そして、私はふいに呼び掛けられて我に返った。