今までの自分にサヨナラを


私はすぐに顔を逸らして、黙って通り過ぎた。


舗装されていない道を車椅子で通るというのは、本当に困難なこと。


車輪は砂利にはまり、足元の悪い地面から伝わる振動は身体に負担を掛ける。


側湾が進み、コルセットをつけているからこそ座っていられるこの身体は、そんな衝撃や振動にも弱いのだ。


そして次は、側溝の途中に設置された目の粗いグレーチングのお出ましである。


普通の人には何でもないようなものが、私たちには大きな壁なのだ。


真っ直ぐに横切れば、見事に前輪が網目にはまって無様に立ち往生。


昔、怪我をしそうになったこともあった。



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