今までの自分にサヨナラを


人がいない場所をただ探し、背丈の高い草村の真前に辿り着いた。


草の間からみえる濁流は力強く、目の前で生み出される自然の音が鼓膜を大きく震わせる。


他には何も聞こえない。


まるでその壮大な音にのみ込まれたような感覚だ。


いっそのこと、この大きな流れにのまれて、命を終わりにできたならどんなにいいか。


内川先輩にはあわせる顔もないけれど、それでも死への思いは消せない。


生きているかぎり、一生消えないに違いない。


私には生きるということが、どうしようもなく苦しいのだ。


その刹那、右頬に何か雫がおちてきた。



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