今までの自分にサヨナラを
気が付けば、机の横に紫色のパイプの電動車椅子がとまっていた。
「あ……茜ちゃん。ごめん、何?」
すると、グレーのパーカーを着た茜ちゃんの肩が呆れたように下がる。
「一緒に音楽行こうと思って。それより、さっきの顔何?」
そう言うと、思い切り眉間にしわをよせる茜ちゃん。
私は思わずくすりと笑った。
「もう、そんな顔してないって。からかわないでよ、茜ちゃん」
私はまだあの顔が面白くて笑いが止まらない。
茜ちゃんはそうやってすぐにからかうんだから。
「話を逸らさない。右手、早く開いてみせて」
そして、茜ちゃんから逃げることなんてできないのだ――。