今までの自分にサヨナラを


私はもうこんなに幸せなのに、いつも彼はそれ以上をくれるのだ。


「ねえ、さゆ、大好きだよ」


こつんと頭をくっつけて、私のために紡がれた彼の言葉。


彼の澄んだ声が耳に舞い込んで体を駆け巡れば、胸はあつく、頬には火照ったように熱がさす。


そして、まわりで茶化すように囁きだす葉音がなぜかくすぐったい。


つい恥ずかしさに俯いてしまうけれど、彼の言葉ほど心があたたかくなるものはないんだ。


彼にもらった想いはすべて宝物。


絶対になくしたくないものができたのだ。


今までの私には考えられないだろう。


こんなにも大切なものも、こんな感情も、私にはなかった。



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