今までの自分にサヨナラを
「――ずっと考えてたんだ。さゆは、あれからどうしてるかなって」
私は彼の言葉に何も返さず、遠くの空を見つめていた。
話したくなんかない。
「そういえば、今はどんな小説書いてる?」
――小説……?
何で――。
呼吸を忘れそうになる。
「……そんな、くだらないこと、してない……」
嘘偽りの夢物語を書いたって意味ないの――。
現実は甘くないの。
私は奥歯を力一杯噛み締めた。
「何なの、あなたは……。あれからって何……」
溢れた感情を言葉にして静かに紡ぎだす。