今までの自分にサヨナラを
「大丈夫だって、茜ちゃん」
私は精一杯の笑顔を見せた。
でも、仮装で黒いマントを羽織った茜ちゃんは表情を変えないばかりか、更に神妙な面持ちになる。
わかってた、茜ちゃんに嘘を吐けないことくらい。
だって、もう十一年の付き合いなのだから。
一つ先輩の茜ちゃんは時にはお姉ちゃんのようであり、そしてお互いの痛みをわかりあえ唯一心を開ける親友だ。
だからこそ、今は嘘を吐きたい。
茜ちゃんが大切だから。
「あっ、私、向こうでビラ配ってくるね」
私は茜ちゃんの優しさから逃げるように、西にあるエレベーター前へと向かった。