今までの自分にサヨナラを


だから、私は茜ちゃんに薄っぺらな気休めの言葉などかけられない。



その時ふとあることを思い出した。


「ねぇ、茜ちゃん。小説は……?」


そう、茜ちゃんは小学生の頃から小説を書くのが大好きで、ずっと書きためている。


小説家になりたいと、言っていたほどに――。


「ははっ、親も作業所に行けって言ってるのに、無理だよ」


茜ちゃんの乾いた笑いが通路に響く。


「言えないなぁ。『小説家になるから、作業所には行きたくないです』なんて、ね」


そこにはまるで、冗談でも言うように笑ってみせる茜ちゃんがいた。



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