今までの自分にサヨナラを
「かわいい!!ねぇねぇ、お兄ちゃん、のん、欲しい!」
のんちゃんは懸命に爪先立ちして絵に手を伸ばす。
「いいよ」
彼はにっこりと絵を手渡すと、のんちゃんははしゃいで絵を掲げながらスキップで病室を飛び出していった。
二人きりになった病室……。
私はさっきの絵が今だに頭から離れない。
私が言葉で描いた夢の世界のワンシーンが――。
「ねえ、さゆにもプレゼントがあるんだ」
ぼーっと空を見ていた私は、気付けば彼が傍にいた。
そっと差し出されたのは、とりどりの色鉛筆でふんわり濃淡のついた少女の絵。
ポニーテールの髪はしなやかに伸び、キラキラと無邪気に笑ってる。