今までの自分にサヨナラを
手には捨てられない皺くちゃになった彼のメモ。
もう関係ないのに気になる私は変かな……。
でも、確かめるだけなら――。
ピンクのケータイを開くと、カチッと音が響く。
指は怯えるように震えて、たった十一桁の番号をゆっくりゆっくりダイヤルする。
押すたびに心が重くなっていく。
恐る恐る耳に当てれば淡々と流れだす呼び出し音。
その音が一度鳴るごとに胸が騒つく。
……出ないで……。
確かめるため、蹴を付けるためだけなのに、弱気になっちゃダメだよね。
私は部屋をオレンジに染める強い夕日に目を伏せた。
「はい、もしもし」