今までの自分にサヨナラを
微かな沈黙が流れる。
車椅子の私の影は長くなって、膝に置かれた右手の拳はもどかしさでいっぱい……。
「――やっと思い出してくれたんだ――」
その時、とてもとても優しく落ち着いた声が、穏やかに耳に流れ込んだ。
何故か心までくるまれるみたい。
あたたかくあたたく、そっと包みこまれる――。
「忘れてたなんて酷いよ~。俺、会いたかったんだから」
今度はいじけたような拗ねた声。
本当に声色が素直によく変わる。
――不思議な人――。