今までの自分にサヨナラを


私は、目を泳がせながら照れたように笑う彼に、ただただキョトンとしていた。


突然の提案にお母さんの動きも止まってる。


それも無理はない。


私は家族以外と外出なんてしたことがないのだから。


どこかに行くなら移動手段は親が運転する車。


街を車椅子で歩くことは滅多にないし、思えば近所すら車椅子で散歩したことなんて一度もなかった。


いや、正確には、そんなことにも気付いてなかったんだ――。


「……光君が大丈夫なら、いいけれど……」


お母さんの声はやっぱり戸惑ってる。


でも、私はそっとお母さんに声をかけていた。


「――私、行ってみるよ」



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