泣き虫なお姫さま。
はぁー、ったく。
“まお”だから、いいか。
…… そう、“まお”だから、なんだ。
俺にとっては、まおは“幼なじみ”でありながら…… 大切でかわいい、好きな相手でもある。
“いっくん”なんて呼び方、まお以外のヤツに呼ばれたら虫ずが走る。
でも“いっくん”って呼び方は、まおなら許せる。
“好きになったら、負け”とは、よく言うが…… 俺はとことん、まおに甘い。
「まお、今、何時だ!」
やばい、のんきにまおのペースに合わして走っていたら。
「7時30分」
「急げ、間に合わなくなる」
電車に間に合わなくなりそうになってしまった。
道行く人たちをうまく交わして、駅に向かう。
「まお、急げ」
駅の駐輪場に自転車を停め、ホームに向かうが――― 後ろのまおが気になり振り返る。