泣き虫なお姫さま。
頭の片隅にいる、彼女。
俺と陽太、まおと愛川で並ぶ。
まおと愛川の前を歩く俺らの会話は専ら、その日の授業やバスケについて。
陽太と仲良くなったきっかけがバスケだったからな……。
――― あっ、忘れていた。
「まおっ」
俺は振り返り、まおを呼ぶ。
「なに?」
「今夜、まおん家だから」
俺の両親は、共働きをしている。
何を思ったのか…… 母さんは、俺を時々、まおん家でご飯を食べさせるようにした。
「バイトは?」
「今日は無し」
まおの家で、ご飯を食べる事は嫌じゃない。
まおの両親は俺を可愛がってくれるし、まおの妹、理央(リオ)ちゃんも俺に懐いてくれているから…… 文句なんて、無い。
でも、まおにしたらなんとでもない時間なんだよな。
まおと過ごせることは、俺としてはめちゃくちゃ嬉しい。
だから、まおに“宿題を一緒にやろう”と誘ったり、まおが見ているテレビを一緒に見たり……。
こうやっているのに、アイツは全く気にしていない。
空気に近い存在なんだろう。